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会社倒産からの船出 第8章:再出発の朝

冬が明け、街に春の気配が漂い始めた頃、智也は自宅の書斎で、ひとつのメールを読み終えていた。 「三浦様、貴媒体を拝見し、ぜひ取材をお願いしたく……」 某業界誌からの掲載依頼だった。個人で運営していたアフィリエイトメディアが、ついにメディアとし...
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会社倒産からの船出 第7章:転機

初夏の風が網戸越しに部屋を通り抜けていく。三浦智也はパソコンの前で、後輩からのメールを見つめていた。 「よかったら、うちのプロジェクト手伝ってもらえませんか?」 送り主は、かつて同じ広告代理店で働いていた後輩・藤原だった。今はスタートアップ...
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会社倒産からの船出 第6章:数字の向こうにいる人

午前五時、目覚まし時計よりも早く目が覚めるのが、最近の智也の日常だった。父の入院と介護施設への入居が決まり、生活のリズムがようやく整ってきたとはいえ、胸の奥に巣食う焦燥感は消えない。 パソコンを立ち上げ、アナリティクスの画面を開く。昨日公開...
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会社倒産からの船出 第5章:光と影の交差点

父の病状が急変したのは、初めて月五万円を超える収益を得た翌週のことだった。 「三浦さん、今お父様のことでお時間いただけますか?」 訪問看護師からの一本の電話が、智也の朝を打ち砕いた。 「先ほど様子を見に行ったところ、意識が少し混濁していて。...
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会社倒産からの船出 第4章:ゼロからの発信

最初の報酬「36円」に感激した夜から、三浦智也の生活には小さな変化が生まれた。以前は午前中をぼんやりと過ごしていたが、今では朝食をとるとすぐにパソコンの前に座り、昨日の記事の見直しや新しいネタのメモに取り掛かっている。 だが、現実は甘くない...
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会社倒産からの船出 第3章:クリックの向こう側

深夜の台所で、お湯を沸かしながらスマホを弄っていた。白湯を飲む癖がついたのは、胃が弱くなったからか、それとも空腹をごまかすためだったか。窓の外では雨が降っていた。静かな、寂しい夜だった。 何気なくSNSを眺めていると、ある広告が目に止まった...
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会社倒産からの船出 第2章:日雇いと介護

三浦智也は、朝四時の薄暗い空気の中、自転車をこいでいた。向かうのは、郊外の工業団地にある倉庫。週三回の荷降ろしのアルバイトだ。 時給は千百円。五時間勤務で、手取りは交通費を除いて四千円にも満たない。それでも、何もないよりはましだった。 「お...
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会社倒産からの船出 第1章:終わった肩書

三浦智也は、十年以上勤めた広告代理店のプレゼンルームにいた。照明が落とされ、ホワイトスクリーンにプロジェクターの光が投影される中、彼の声だけが静まり返った会議室に響いていた。 「……つまり、生活者目線の訴求が、いま求められている価値です。単...
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65歳AIとネット販売 最終章

最終章「未来を継ぐもの」夏の終わり、風がほんの少しだけ涼しくなり始めた頃。
正吉はひとり、倉庫の前に立っていた。「こんなに大きゅうなるとはのう……」最初は自宅の一角だった。
それが今では、職人たちと使う共同作業場、商品管理倉庫、オンライン受...
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65歳、AIとネット販売 第八章

第八章「AIと正吉、全国へ」「正吉さん、出ましたよ!掲載されました!」ある日、陽太がいつになく興奮した様子で正吉にタブレットを差し出してきた。画面には、地元のニュースサイト『ちいき発見マガジン』の特集記事が掲載されていた。タイトルは、『65...