ブログ

ブログ

人生の第2幕 第5章:口コミと小さな成功

即売会からの帰り道、忠男の胸の内には、久しく感じたことのなかった高揚感があった。「久々に、人に“ありがとう”って言われたな……」単なる物売りではない、自分が育てた命が、誰かの家で大切にされる。その実感が、何よりも嬉しかった。営業マン時代に感...
ブログ

人生の第2幕 第4章:メダカ養殖の始まり

メダカの小さな命を手にしてから、忠男の毎日は少しずつ色づき始めていた。朝、日が差し込む前に起きて水槽を覗く。昨夜産み落とされたばかりの卵が水草の影に光っているのを見ると、自然と笑みがこぼれた。これまで経験してきたビジネスとは違い、数字でも成...
ブログ

人生の第2幕 第3章:メダカとの出会い

忠男は、自分の人生がどこに向かっているのか分からないまま日々を過ごしていた。失敗続きの起業に疲れ果て、心の中で一度「何もしたくない」という気持ちが膨らみつつあった。しかし、何もせずに家でじっとしているわけにもいかない。だからこそ、釣りに行っ...
ブログ

人生の第2幕 第2章:失敗の連続

退職から数ヶ月が過ぎた。忠男は何度も「これから何をするべきか?」と考え続けていた。釣りが気晴らしにはなったが、それだけでは生活が成り立たない。退職金をすべて使い果たすわけにはいかないし、年金だけでは足りない。何か新しい仕事をしなければならな...
ブログ

人生の第2幕 第1章:定年退職の日

山田忠男(やまだ ただお)、60歳。その男は、ずっと倉庫業界の営業マンとして生きてきた。東京近郊の物流拠点で、40年間、倉庫を管理する仕事をしてきた。朝早くから夜遅くまで、貨物がスムーズに流れるように手を尽くし、仲間たちと連携し、納期に追わ...
ブログ

愛は終わらない、暮らしも変わる  第7章 再出発の朝

朝の光が、カーテン越しにやわらかく部屋を満たしていた。誠一は窓を開け、ひんやりとした空気を胸いっぱいに吸い込んだ。 机の上には、昨日まで書き続けていた原稿が積み重なっている。そこには、長年しまい込んできた想いが言葉として形を持ち始めていた。...
ブログ

愛は終わらない、暮らしも変わる  第6章 心の奥に咲く声

日曜日の午後、街の図書館は静けさに包まれていた。ガラス張りの窓から差し込むやわらかな陽光が、木製の机に優しい影を落としている。 誠一は涼子と並んで座っていた。 「この間の原稿、続きを読ませてくれる?」 涼子が小声で訊ねる。 誠一は一瞬戸惑っ...
ブログ

愛は終わらない、暮らしも変わる  第5章 記憶の引き出し

晴れた土曜の午後。風は少し冷たいが、陽の光はやさしく、街の緑をふんわりと包んでいた。 誠一は古い木製の引き出しを開けていた。長年手をつけていなかった書斎の棚。そこには、退職後もしまい込んだままの古い資料やノート、そして一冊のアルバムが眠って...
ブログ

愛は終わらない、暮らしも変わる  第4章 すれ違いの午後

昼過ぎ、涼子は縁側で静かにお茶をすすっていた。雨は上がったものの、まだ空は鈍いグレーを引きずっている。 誠一と出かけた市場の余韻は、まだ彼女の中に温かく残っていた。しかし、それと同時に、小さな違和感も芽を出していた。(私ばかり、頼っているの...
ブログ

愛は終わらない、暮らしも変わる  第3章 心の隙間

六月の空は、朝から厚い雲に覆われていた。雨が降るでもなく、ただじっとりと重たい空気が町を包んでいる。 涼子は、朝から気分が晴れなかった。 昨夜、東京にいる娘から久しぶりに電話があったのだ。孫が夏休みに遊びに来たいという話から、ふと話題が変わ...