― あの季節に立ち止まった、想いの記録。
壁に掛けられたままのカレンダーが、
最後にめくられたのは、去年の春だった。
「また来るね」と言って、彼が部屋を出た日から、
そこだけ時間が止まっていた。
——
ふたりが付き合い始めたのは、梅が咲くころ。
それまでの人生で「恋愛」なんて言葉を口にするのは久しぶりで、
照れ笑いばかりの関係だったけれど、
彼はいつも、さりげない約束をしてくれた。
「来月の桜が咲いたら、一緒に見に行こう」
「5月になったら、庭の手入れを手伝うよ」
それが嬉しくて、彼女は毎月、カレンダーの空白に小さく書き込んでいた。
“桜”“手入れ”“ランチ” “晴れますように”
それは小さな予定ではあったけれど、
どれも日々を明るくしてくれる“灯り”のようなものだった。
——
その日、彼は少し疲れた表情をしていた。
「なんか、風邪っぽいかもな」
そう言い残して、カレンダーのある部屋をあとにした。
ほんの一時のことだと思っていた。
でも、彼は戻ってこなかった。
連絡が途絶え、ようやく届いたのは、親族からの手紙。
「入院していた」「そのまま、静かに息を引き取った」という文字列が、
にわかには現実として飲み込めなかった。
しばらくは、何も手につかなかった。
部屋の掃除も、洗濯も、食事も。
そして——
壁のカレンダーだけが、取り残されたように春を告げたままだった。
——
やがて季節は巡り、今年も同じ月になった。
彼女はふと、手に取ったカレンダーを見つめた。
春の日に、ふたりで行くはずだった“桜並木”のメモ。
その下に残された余白に、何かを書き加えようと思った。
——「ひとりで、行ってみる」
そして当日、小さな桜並木の遊歩道を、
彼女はひとりで歩いた。
花は去年より少し早く咲いていて、
ふたりが並んで歩いていたころの記憶と、
静かに重なった。
帰ってきた部屋のカレンダーには、
再び手書きの文字が加わっていた。
“来年も来よう。話したいことが、まだあるから。”
彼はもう隣にはいない。
けれど、彼女の中の「約束」はまだ終わっていない。
止まった時間の中にあった想いは、
ふたたび静かに動き出していた。
● “記憶を綴る”大人のカレンダー3選
——日々をやさしく記録する、紙のカレンダーたち
①【 シンプル壁掛けカレンダー】
- 書きやすいマット紙
- 祝日や週番号も最小限の表記で、余白が広い
- 文字もインテリアも邪魔しないデザイン

②【アートカレンダー(四季の写真)】
- 四季の風景写真とともに過ごす12か月
- 記念日を“景色”と結びつけたい人に
- 贈り物にも人気のデザイン

③【レターカレンダー|手紙を書くように予定を残す】
- 各月ごとにメッセージスペース付き
- 「感情」や「出来事」を丁寧に書ける
- 過去の自分と向き合いたい方におすすめ
● カレンダーに、想いを残すということ
日々は過ぎていくけれど、
止まってしまった時間も、忘れられない記念日もある。
そして、そこに少しの文字を加えるだけで、
過去が未来と繋がっていくこともあるのです。
あなたの壁にあるカレンダーにも、
“もう一度動き出す日”が、きっと来るはずです。