― 忘れられないメロディが、記憶の扉を開ける。
その音は、思いがけずにやってきた。
タンスの引き出しを整理していた彼女が、ふと手にしたのは、小さな木箱だった。
つまみを回すと、ひときわ澄んだ音色が、部屋に流れた。
それは、二度と聴くことはないと思っていたメロディだった。
——
オルゴールを贈られたのは、もう何十年も前のこと。
彼と付き合って間もないころ、誕生日に「これ、君のイメージで選んだんだ」と手渡された。
音色は『カノン』。
「落ち着いた旋律が、君に似合ってる」と、少し照れたように言っていた。
当時の彼女は音楽が好きで、でも人前で話すのは苦手だった。
言葉よりも、音で気持ちを伝えるようなタイプだった。
そんな彼女にとって、そのオルゴールは“言葉を持たない手紙”のようだった。
別れは、唐突ではなかったが、ゆっくりと確かに訪れた。
互いに忙しくなり、連絡の回数が減り、
やがて自然に、連絡を取らなくなっていた。
理由らしい理由もなかったが、会わなくなって10年が経ち、20年が過ぎた。
そして、オルゴールも、記憶の奥にしまい込まれていた。
——
部屋を片付けていたのは、何かを「整理したい」気持ちだったのだろう。
身のまわりも、気持ちも。
それでも、この小さな箱だけは、なぜか手放すことができなかった。
「忘れていたはずなのに、どうしてこんなに懐かしいんだろう」
彼女はそっと、もう一度ねじを巻いた。
そして、窓辺の椅子に腰を下ろした。
旋律が、部屋をやさしく包み込む。
音の粒が、あのころの時間を少しずつ蘇らせていく。
駅までの帰り道、並んで歩いた冬の午後。
風に舞った髪を、そっと直してくれた仕草。
言葉にしなくても伝わった、一瞬の気配。
彼女は、小さく息をついた。
“いま会っても、あの人は覚えていないかもしれない”
でも、そんなことはどうでもいい。
このメロディを聴くことで、
確かにあの時間が存在していたことがわかる。
それだけで、十分だった。
——
オルゴールの音は、終わりを迎えた。
部屋の静けさが戻ってきたとき、彼女の表情は少しだけやわらかくなっていた。
閉じた記憶の引き出しに、やさしく布をかけるような気持ちで。
そして、彼女はふと呟いた。
「音って、すごいね。言えなかった言葉まで、思い出させてくれる」
● 心に残る“音の贈り物” ― 大人のためのオルゴール3選
忘れられない旋律を、もう一度。
心を静かに整えてくれる、やさしい音色のオルゴールをご紹介します。
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②【木製ジュエリーボックス一体型オルゴール】
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③【手回し式アンティーク風ミニオルゴール】
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● 音がつなぐ、記憶の片隅
言葉にできなかった想い、
時間が経っても色褪せない気持ち。
それを思い出させてくれるのが、
一曲のメロディであり、一台のオルゴールかもしれません。
あなたの心の引き出しにも、
そっとしまってある旋律がありませんか?
その扉を、やさしく開けてみる時間を――。