【アンティークミラー】彼女の部屋にあった、静かな鏡と秘密

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― 映り込む過去と、心に残る“姿”の話。

 

初めて彼女の部屋に招かれた日、最初に目を奪われたのは、窓辺に置かれた小さな鏡だった。

木製のフレームは細かな彫刻が施されていて、ほんのりと飴色に光っている。
周囲に置かれたドライフラワーや文庫本よりも、ずっと静かに、そこに“在る”という存在感を放っていた。

 

「それ、母の形見なんです」

彼女はそう言って、鏡の埃を指でそっとぬぐった。

「もう映らなくなりそうな気がして、たまに磨いてあげるんです」

 

彼はその鏡に、自分の顔がぼんやりと映るのを見た。
どこか、昔の白黒写真のように輪郭がやわらかくなって、記憶の中に吸い込まれるようだった。

 

——

 

彼女と知り合ってから数ヶ月、
ふたりは夕暮れの喫茶店でよく過ごすようになった。
けれどその日、突然の雨で「うち、来ますか?」と彼女が言ったのだった。

 

その一言が、彼の中で「距離」を変えた気がした。
そして彼女の部屋に入った瞬間、彼は彼女という人の“過去”にも、少し足を踏み入れたような感覚を覚えた。

 

棚に並ぶ古い文房具、写真立ての中の若い両親、
そして、その鏡。

 

「若い頃、母が毎朝その鏡で髪を整えてたんです。…私、少し憧れてたのかもしれません」

彼女は笑いながらそう言ったが、目元にはどこか遠くを見るような影があった。

「私には似合わないと思って、ずっと押し入れにしまってたんです。でも、あなたと再会してから…なんだか、もう一度出したくなって」

 

鏡の中に映る彼女の横顔が、ふと、誰かに似ている気がした。
それが“過去の彼女”なのか、彼女の“母”なのか、それとも“これからの彼女”なのかは、わからなかった。

 

彼はその鏡をまっすぐに見つめて、言った。

「きれいです。……なんだか、“大切な時間”が映っているみたいだ」

彼女は驚いたように笑って、少しだけ頬を赤らめた。

 

それから、彼女の部屋を訪れるたびに、その鏡がそこにあることが嬉しかった。
彼女が時折、鏡の前で髪を整えるしぐさも、彼の中で“記憶”になっていった。

 

——

 

ある日、彼がふと問いかけた。

「鏡って、なにを見るためにあるんでしょうね」

「姿、じゃないですか?」

「…僕は、“気持ち”を見るものな気がするんです。誰かの、過去とか、願いとか」

 

鏡はただ静かに、光を反射するだけの存在かもしれない。
けれど、それを見る人の心のありようによって、映るものも変わっていく。

 

今日も、彼女の部屋の鏡は変わらずそこにある。
過去と、今と、これからを映しながら。

 


● 映り込む記憶をそっと支える ― おすすめアンティーク風ミラー3選

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あたたかな木のぬくもりと、クラシカルな雰囲気をもつアンティーク調ミラーをご紹介します。


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● 鏡の向こうにある「誰か」を想うとき

鏡は、自分だけでなく、誰かの時間や思い出をも映し出します。
それが静かな午後の中でそっと寄り添うように。

 

ふたりで過ごした日々、
言葉にならなかった想い、
そのすべてが、鏡の向こうで今もやさしく輝いているかもしれません。