湯気が、ゆっくりと上がっていた。
その日も、寒かった。
カーテンの隙間から差し込む光はあったかいのに、
床を歩くと、空気の冷たさが膝下にまとわりついてくるようだった。
「乾燥してるわね。朝、唇が割れちゃって」
澄子さんは、そう言って小さな加湿器のスイッチを入れた。
シュウウ、と音を立てて白い蒸気が立ち上る。
その様子を見ているだけで、なんとなく心が落ち着いていく。
「この加湿器、音も静かでいいのよ」
彼女はスチームの向こうからそう言った。
「寝てるときも気にならないし、何より蒸気がやさしいの」
「やさしい蒸気?」
「うん、なんとなく、抱きしめられてるみたいな感じ」
私は笑った。
でも、すぐに「わかる気がする」と返した。
テーブルの上には、彼女が淹れてくれたハーブティーが湯気を立てていた。
カモミールとレモンバームの香り。
私には少し甘すぎるが、彼女はそれがいいと言う。
「コーヒーだと胃が重くなるのよ」
「まあ、年を取るって、そういうことだな」
「そうね。代わりに“やわらかい味”が好きになるの」
「やわらかい味、ね」
「そう。あったかくて、ちょっとだけ甘くて、でも残らない味」
それはまるで、いまのふたりの関係みたいだと思ったけれど、口には出さなかった。
「加湿器って、昔はやかんだったのよね」
「ストーブの上に乗せるやつ?」
「そう。それで部屋じゅうがカビくさくなって、母に怒られたわ」
「いい時代だったんだな」
彼女は笑いながら、加湿器の水を足した。
「でも、いまは便利よ。これは自動で止まるし、倒れても安心。
シニア向けに作ってあるらしいの」
「シニアって言葉、ちょっとだけ傷つくんだよな」
「ふふ、じゃあ“大人向け”にしましょうか」
「……こっちの方が余計に照れるな」
窓の外には、細かい雪がちらついていた。
気づかぬうちに、冬は深くなっていたらしい。
湯気の向こうにいる彼女の輪郭が、少し揺れて見えた。
「寒いのは苦手だけど、こういう日って、なんだか満たされるわね」
「動けないからこそ、心は動くのかもな」
私の言葉に、彼女は「詩人ね」と返した。
でも、笑ってはいなかった。
時間が、ゆっくりと流れていた。
スチームの音、ティーカップのかすかな音、彼女の呼吸。
どれも静かで、どれも確かだった。
そのとき私は、ふと思った。
あの湯気の向こうには、まだ知らない彼女がいるのかもしれない。
けれど、いまここにいる彼女を、私はとても大切に思っている。
ただ、それだけで、充分だと。
🛍 登場アイテムの紹介
◉ 静かな潤い「スチーム加湿器」
📌超静音・高温スチームでしっかり加湿
📌転倒時自動停止・温度センサー付きの安心設計
📌寝室・リビングに合うナチュラルなデザイン
◉ 心を落ち着ける「シニア向けハーブティーセット」
📌ノンカフェインで夜も安心
📌カモミール、レモンバーム、ローズヒップなど6種セット
📌個包装で保存も簡単、ギフトにも最適