「今日は、寒いわね」
玄関を開けるなりそう言って、澄子さんが現れた。
午後四時ちょうど。
それは、私たちの小さな約束のような時間だ。
私はこたつのスイッチを入れて、急須にお湯を注いだ。
湯気がふわりと立ちのぼる。
澄子さんはいつもの場所に腰をおろし、膝の上にそっとなにかを置いた。
「あ、それ。まだ使ってるの?」
私が指をさすと、澄子さんはにっこり笑った。
「うん。これがないと、もう冬は乗り切れないわ」
彼女が持っていたのは、去年私が贈った電子レンジ式の湯たんぽだった。
澄子さんは、冬になるとすぐ風邪を引く人だった。
「昔は、あったかいものが苦手だったのにね」
そう笑いながら、マフラーの端をくるくるといじる姿が、私はなんとなく好きだった。
去年の暮れ。
デパートを歩いていたとき、偶然目に留まったのが、あの湯たんぽだった。
やわらかいカバー、ほのかに香るラベンダー、電子レンジでチンするだけという手軽さ。
「これは澄子さん向きだ」と、即座に思った。
「あれから毎日使ってるの」
澄子さんは、膝にのせた湯たんぽをそっとなでた。
「なんかね、この重さが落ち着くのよ。やさしく抱きしめられてる感じっていうのかな」
私はふと、大学生の頃に読んだ短編小説を思い出した。
冷えた手をこたつの中でつなぐシーンがあって、それがとても美しく感じた記憶がある。
言葉を交わさずとも、そっと寄り添う。
そんな時間が、いま自分の目の前にも流れている気がした。
「実はね、替えカバーも買ったの」
スマホを取り出した澄子さんが、画面をこちらに向けた。
そこには私が贈った湯たんぽと、同じ型の別色が表示されていた。
「最近、ドラッグストアじゃこういうの売ってなくてね。ネットで見つけたの」
小さな文字を指で広げながら、彼女は嬉しそうに笑った。
干し柿と、急須と、湯たんぽ。
すべてが、午後四時のテーブルに自然に収まっていた。
外は、寒い北風。
でも、この部屋の中には、
湯気と、やわらかな空気と、そして小さな安心があった。
たぶん私は、こういう時間のことを
「幸せ」って呼ぶんだと思う。
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