観光列車の終点から、さらにバスで三十分。
ふたりが降り立ったのは、山間にある温泉街だった。川沿いに続く石畳の道、古い木造旅館、そして色づいた紅葉。落葉が静かに舞い、旅情をそっと深めていた。
「ここは、もう何年も前に妻と来た場所で……それ以来です」
誠が言った。
「そうなんですね。私も、主人と最後に訪れた温泉がこのあたりだったと思います」
言葉が、どこか重なったようだった。
ふたりはそれ以上多くを語らず、予約していた宿へと向かった。
老舗の温泉旅館は、木造三階建ての静かな佇まいだった。部屋の窓からは渓谷と、赤く染まったもみじが一望できる。部屋には、すでに温かい番茶が用意されていた。
「静かですね」
「……音がしないことが、贅沢に思える場所ってありますね」
やがて、案内された露天風呂へ向かう。宿の湯は、やわらかく肌になじみ、どこか昔の記憶を呼び覚ますようだった。
男女別の湯ではあったが、同じ空を見上げ、同じ風を感じていると思うと、不思議な安心感があった。
夕食後、ロビーの囲炉裏端でほうじ茶を飲んでいると、誠がふいに語り始めた。
「私ね、今でも夢に見るんです。妻と出かけた旅行とか、何でもない日常とか。でも……目が覚めると、ただ部屋が静かで。筆を持ってても、急に泣きたくなることがある」
真理子は、そっとカップを置いた。
「……私も、ずっと思ってました。もう、何かを始めるような歳じゃないって。でも、誰かと笑ったり、感動したりする心って……いつまでも、あるんですね」
誠は、静かに頷いた。そして、ポケットから何かを取り出した。
それは、小さな封筒だった。
「これ、今日のスケッチです。……さっきの川沿いの風景。よかったら」
中には、色鉛筆で描かれた絵が一枚。
渓谷と紅葉、旅館の屋根。その片隅に、ベンチに並ぶふたりの姿が描かれていた。
「私……こんなふうに、誰かの中にいられるなんて、思ってもいませんでした」
真理子の声が、かすかに震えた。
誠は、照れたように笑った。
「この旅が終わっても、また一緒に描ける景色があればと思って」
「……ええ。私も、そう思えます」
その夜、ふたりの部屋の障子越しには、落ち葉が静かに風に舞っていた。
心にそっと灯がともった夜だった。
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