次の日、誠から提案があった。
「よかったら、観光列車に乗ってみませんか。紅葉が見頃のルートで、沿線には昔ながらの集落や名所もあって……きっと、気に入ると思います」
真理子は一瞬迷ったが、すぐに頷いた。誰かと電車で出かけるなんて、何年ぶりだろう。旅行というより、小さな冒険のような響きがあった。
改札を通ると、ホームにはレトロ調の観光列車が待っていた。深いグリーンとクリーム色の車体に、木枠の窓が並び、どこか昔の映画のような雰囲気が漂っている。
乗り込んだ車内は、木のベンチと真鍮のランプ、天井の扇風機までがクラシカルで、乗った瞬間にふたりの顔がほころんだ。
「まるで、昭和の汽車みたいですね」
「子どものころ、親に連れられて乗ったローカル線を思い出します」
発車のベルが鳴り、列車がゆっくりと動き出した。窓の外では、赤や黄色の葉が風に揺れていた。
走り出してしばらくすると、アナウンスが流れ、沿線の見どころが紹介される。古い温泉宿、手作りの和菓子店、棚田の広がる山あいの村――どれも素朴で、記憶のなかの日本そのものだった。
誠は、窓際に持参した小さなスケッチブックを広げて、何かを描き始めた。
「また絵を? 本当にどこでも描くんですね」
「旅先では、描きたくなる景色ばかりで。……真理子さんは、描かないんですか?」
「私は、描くより……見る方が好きです。人の描いたものでも、風景でも。見て、心が動くと、忘れないんです」
そう言って笑った真理子の横顔に、誠はしばらく視線を留めていた。
気づいた真理子は、少しだけ視線を落とした。
途中の駅で数分停車した際、ふたりは駅の売店に立ち寄った。
真理子は、飴色の栗まんじゅうに目を奪われ、誠は地元陶芸作家の小皿を手に取った。
「これ、お土産に……なんて、誰にあげるでもないけど」
「旅先で買ったものって、自分へのご褒美でもありますよね。使うたび、思い出すから」
買ったまんじゅうを半分ずつ分け合い、再び列車に戻る。
出発後、車掌が記念の乗車証を配りに来た。小さな厚紙に、日付と路線名、それに赤い紅葉のスタンプが押してある。
「こんなものまで。……なんだか、子どもに戻ったみたい」
真理子が笑うと、誠もつられて笑った。
この数日、笑うことが増えた。心が少しずつ、やわらかくなっている気がする。
終点の駅に着くころ、陽は傾き始めていた。山の斜面は赤く染まり、空の青と黄金の光が溶け合っていた。
駅前の広場には、木製のベンチと、秋桜が風に揺れていた。誠がそっと声をかけた。
「よかったら……また、別の日もどこかへご一緒しませんか」
「ええ、よろこんで。今度は、少し遠くても構いません」
秋の日差しの中で、ふたりの影がゆっくりと並んで伸びていった。
■登場アイテム紹介:第3章「観光列車と小さな冒険」
1. 【レトロ列車にも馴染むクラシックなスカーフ】
[フランス製 シルク混ロングスカーフ(無地・リバーシブル)]
真理子の装いにも似合いそうな、落ち着いた色合いと光沢。冷房対策にも。
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2. 【旅先でスケッチを楽しむポータブル水彩セット】
誠が旅に携えていたような、コンパクトで本格的なスケッチ道具。自然の色をすぐ描ける。
▶参考価格:約3,000円〜
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3. 【観光列車のお供にぴったりな和菓子】
[信州栗まんじゅう詰め合わせ(10個入り)]
観光途中の立ち寄り駅で見つけたような素朴な甘さ。旅気分をおうちでも。
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4. 【旅の記念にぴったりなスタンプ帳】
記念スタンプを押す楽しみが増える。シニアの旅の新しい習慣として人気。
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5. 【丈夫で温もりある陶器の小皿】
[信楽焼 小皿セット(2枚組)]
誠が手に取ったような、地元作家の温もりある器。旅先の思い出とともに。
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