日曜日の午後、雲ひとつない青空の下で、ふたりは並んで歩いていた。
今日は少し足を延ばして、町の小さな商店街まで。
弘が昔よく通っていた喫茶店がまだ残っているらしいと聞いて、澄子を誘ってみたのだ。
「ここが、“パーラー風音”……懐かしいな。看板も変わってないですね」
「なんだか、昭和の映画みたいですね。こういう雰囲気、嫌いじゃありません」
木枠のガラス戸を開けると、カランとベルが鳴った。
中には落ち着いた照明と、ゆったりした椅子。ジャズの流れる静かな空間。
ふたりは窓際の席に座った。
メニューも昔ながらで、弘はブレンドコーヒーを、澄子はカフェオレを頼んだ。
「こういうお店、久しぶりですね」
「昔は、妻とよく来てたんですよ。コーヒーの味は、ここが一番だって言ってました」
「……私も、夫と来た喫茶店がありました。でも、そこはもうなくなっていて」
「時代とともに、いろんなものが消えていきますね。でも、こうやって残ってくれてる店もある」
「はい。そして、こうして新しく“ふたり”で来られる場所も、あるんですね」
コーヒーが運ばれてきて、ふたりはカップを手にした。
窓の外には、ゆっくりと歩く家族連れや、自転車を押す若者の姿。
「弘さん」
澄子がふいに名前を呼んだ。
その響きは、やわらかく、午後の光に溶けるようだった。
「はい、澄子さん」
弘も、静かに返した。
たったそれだけの会話なのに、胸の奥があたたかくなる。
「……名前って、不思議ですね。呼ばれるだけで、少し自分を肯定された気持ちになります」
「うん。あなたに呼ばれるのが、こんなにうれしいなんて、思ってもみませんでした」
カップを傾けながら、ふたりはそれぞれの時を、丁寧に重ねていた。
気を使いすぎない距離で、でも確かに相手を思いやる関係。
その静かなやり取りの中に、「これから」の時間が芽生えていた。
「また、来週の日曜も、ここに来ませんか」
弘がそう言うと、澄子はふわりと微笑んだ。
「はい。来週も、“弘さん”と、“澄子さん”で、ここに来たいです」
コーヒーの香りが、ふたりの未来をやさしく包んでいた。
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