『ゆっくり歩こう、ふたりで。』第5章「日曜の午後、名前で呼ぶなら」

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 日曜日の午後、雲ひとつない青空の下で、ふたりは並んで歩いていた。

 今日は少し足を延ばして、町の小さな商店街まで。

 弘が昔よく通っていた喫茶店がまだ残っているらしいと聞いて、澄子を誘ってみたのだ。

 「ここが、“パーラー風音”……懐かしいな。看板も変わってないですね」

 「なんだか、昭和の映画みたいですね。こういう雰囲気、嫌いじゃありません」

 木枠のガラス戸を開けると、カランとベルが鳴った。

 中には落ち着いた照明と、ゆったりした椅子。ジャズの流れる静かな空間。

 ふたりは窓際の席に座った。

 メニューも昔ながらで、弘はブレンドコーヒーを、澄子はカフェオレを頼んだ。

 「こういうお店、久しぶりですね」

 「昔は、妻とよく来てたんですよ。コーヒーの味は、ここが一番だって言ってました」

 「……私も、夫と来た喫茶店がありました。でも、そこはもうなくなっていて」

 「時代とともに、いろんなものが消えていきますね。でも、こうやって残ってくれてる店もある」

 「はい。そして、こうして新しく“ふたり”で来られる場所も、あるんですね」

 コーヒーが運ばれてきて、ふたりはカップを手にした。

 窓の外には、ゆっくりと歩く家族連れや、自転車を押す若者の姿。

 「弘さん」

 澄子がふいに名前を呼んだ。

 その響きは、やわらかく、午後の光に溶けるようだった。

 「はい、澄子さん」

 弘も、静かに返した。

 たったそれだけの会話なのに、胸の奥があたたかくなる。

 「……名前って、不思議ですね。呼ばれるだけで、少し自分を肯定された気持ちになります」

 「うん。あなたに呼ばれるのが、こんなにうれしいなんて、思ってもみませんでした」

 カップを傾けながら、ふたりはそれぞれの時を、丁寧に重ねていた。

 気を使いすぎない距離で、でも確かに相手を思いやる関係。

 その静かなやり取りの中に、「これから」の時間が芽生えていた。

 「また、来週の日曜も、ここに来ませんか」

 弘がそう言うと、澄子はふわりと微笑んだ。

 「はい。来週も、“弘さん”と、“澄子さん”で、ここに来たいです」

 コーヒーの香りが、ふたりの未来をやさしく包んでいた。

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