『ゆっくり歩こう、ふたりで。』第4章「歩幅を合わせて」

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 「……歩きませんか?」

 そう言ったのは、澄子のほうだった。

 午後のベンチに座ってコーヒーを飲んだあと、ふたりはいつものように少し話していた。

 話題が一段落したころ、ふと彼女が立ち上がった。

 「この公園のまわり、ぐるっと一周歩くとちょうど十五分くらいらしいですよ。歩幅をそろえたら」

 弘は思わず微笑んだ。

 「歩幅、ですか……。昔から、誰かと並んで歩くのが苦手だったんです」

 「私もです。でも、もう急ぐ必要もないですしね。のんびりいきましょう」

 ゆっくりと歩き出したふたりの足元には、落ち葉がカサカサと音を立てていた。

 まだ夏の名残があるが、風は秋の気配を含んでいて、どこか肌にやさしい。

 「昔、夫とよく歩いた道があったんです。でも、あの人は早足で、いつも私が小走りになるような感じで……」

 「わかる気がします。私の妻も、よく先に立って歩いてました。あの人はせっかちで、私はのろくて」

 「……でも、こうして歩くと、ゆっくりって、案外いいですね」

 途中、少し傾斜のある道にさしかかった。

 弘が無意識に歩調を緩めると、澄子もそれに合わせて一歩ずつ進んだ。

 互いに言葉にしなくても、どこか気遣いが行き交っている。

 「弘さん、気づいてました?」

 「何をですか?」

 「私、今日あなたのこと、名前で呼んでましたよ」

 弘は驚いたように足を止めた。

 「……本当だ」

 「そろそろ“工藤さん”も卒業しようかと。名前で呼ばれるの、やっぱりうれしいものですね」

 弘はしばし無言で空を見上げた。

 「……じゃあ、僕も“澄子さん”と呼びましょうか」

 ふたりの間に、そよ風が吹き抜ける。

 その風のやわらかさと、名前を呼び合う響きが、穏やかに重なっていた。

 「名前で呼ぶだけで、なんだか歩幅まで近づいた気がしますね」

 澄子がそう言うと、弘は小さくうなずいた。

 「ええ、まったくです。今の歩幅が、たぶんちょうどいい」

 ぐるりと公園を一周して、ふたりは元のベンチに戻った。

 少し汗ばんだ額に風が気持ちいい。

 弘がハンカチで額をぬぐいながら言った。

 「次は、もう少し遠くまで歩いてみますか」

 澄子は、静かに笑った。

 「はい。ゆっくり、歩幅を合わせながら」

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