『春の風が、名前を運ぶ日』第5章「春の風が吹いた日」

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 桜が散り終えた図書館の前庭に、春の終わりを告げる風が吹いていた。

 新緑が芽吹き、若葉のにおいが空気に混じっている。

 「この風、覚えてますか?」

 健一がそう尋ねたのは、久美子と並んで座るベンチの上だった。

 「ええ。ちょうど一年前、あなたとここで初めて話した日のことを思い出します」

 久美子は、足元に落ちた最後の一枚の花びらを見つめて言った。

 ふたりの関係は、少しずつ、でも確実に形を変えてきた。

 季節の装飾を一緒に作り、名前を呼び、手を取り、いくつもの“ふたりの春”を積み重ねた。

 その重なりは、どれも小さくて、だれにも気づかれないようなものかもしれない。

 けれど、ふたりには十分すぎるほど大きな、確かな軌跡だった。

 「……ねえ、健一さん」

 「はい」

 「来年の春も、こうしてベンチに座っていられるでしょうか?」

 彼は迷いなくうなずいた。

 「もちろんです。……むしろ、それが“ふたりの約束”にしませんか?」

 「ふたりの……約束?」

 「ええ。来年の桜の頃、ここでまた会う。そのときも、変わらず名前で呼び合って、笑っていられるように」

 久美子は少し照れながら、でもうれしそうに言った。

 「ええ、約束です」

 風が吹いた。新緑を揺らし、空の色を変え、ふたりの髪をそっと撫でていった。

 春は終わりを迎える。けれど、それはまた始まりの合図でもある。

 ふたりは立ち上がり、並んで歩き出した。

 その背中には、春の光がそっと降り注いでいた。

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