『春の風が、名前を運ぶ日』第4章「桜の木の下で手を取って」

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 四月の初め、町の桜並木は今が盛りだった。

 満開の花びらが風に舞い、まるで空から雪が降っているかのような光景。

 そんな中、久美子と健一は並んで歩いていた。

 「すごいですね……こんなに咲いてるの、久しぶりに見たかもしれません」

 「ええ。毎年見てるはずなのに、今年は特別きれいに感じます」

 ふたりは自然と足を緩め、広場の桜の木の下で立ち止まった。

 ベンチに腰をかけると、花びらがひらりと健一の肩に落ちた。

 「……花びらって、肩に落ちるとちょっと照れますね」

 「はい。でも、似合ってますよ」

 久美子が笑ってそう言うと、健一も少し頬を染めた。

 少しの沈黙のあと、彼はゆっくりと口を開いた。

 「久美子さん……今日は、伝えたいことがあったんです」

 「はい?」

 「こうして過ごす時間が、僕にとってどれだけ大切か……いつも伝えようとして、うまく言葉にできなくて」

 久美子は黙って、彼の言葉を待った。

 風が強くなり、桜がざわりと音を立てた。

 「春は別れの季節だと言うけど……僕にとっては、あなたに出会い直した季節なんです」

 「……健一さん」

 「だから、もしよかったら、これからも……こうして並んで歩けたら、うれしいです」

 その言葉に、久美子の目元が少し潤んだ。

 彼女はゆっくりと、膝の上に置かれていた彼の手に、自分の手を重ねた。

 「……並んで、歩きましょう。ずっと」

 ふたりの手が自然と握られる。

 特別な言葉も、照れた笑いも必要ない。手の温もりが、なにより確かな気持ちだった。

 そのままふたりは、しばらく桜を見上げていた。

 風が舞い、花びらがふたりの肩や髪に降りかかる。

 時おり、無言のまま目が合い、ふたりして小さく笑う。

 久美子は思った。

 桜の季節は、毎年めぐってくる。けれど、この春は“もう一度”始まる春だったのだ。

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