図書館のドアを開けると、冷たい空気が背中を押し戻してくるようだった。
吐く息は白く、玄関のガラスには冬の結晶が小さく広がっている。
森田健一は、手袋を外してストーブの前へと向かった。
図書館の職員用休憩室にあるその小さな電気暖炉は、静かに赤い光を灯していた。薪が燃える音はしないが、視覚だけでもじゅうぶんに心を温めてくれる。
「健一さん、来てくださったんですね」
江原久美子が、マグカップを両手に抱えてやって来た。湯気の立つココアの香りがふんわりと広がる。
「寒さに負けそうでしたが、あなたのココアに誘われて」
「ふふ、それなら作戦成功です」
ふたりは暖炉のそばに並んで座った。
小さなソファにはブランケットがかけられ、背もたれのクッションには毛玉が浮いている。どこか家庭のような、緊張の抜けた空気が漂っていた。
「冬になると、人との距離ってちょっと変わる気がしませんか?」
久美子の言葉に、健一はうなずいた。
「気温が下がると、人の心も閉じがちになるけれど、同時に……“温かさ”を求める気持ちも強くなる。そういう意味で、距離が縮まるのかもしれません」
「私、冬が好きなんです」
「寒いのは平気なんですか?」
「いえ、すごく苦手。でも……“温め合う言い訳”ができる季節って、少し嬉しいでしょう?」
健一は、ココアをひと口すすると、ゆっくりと目を細めた。
「久美子さんは、ほんとうに“ことばの温度”がちょうどいいですね」
「それ、褒め言葉として受け取ります」
ふたりは笑い合った。
しばらくの沈黙の後、久美子が小さな紙袋を差し出した。
「これ……早いけど、ちょっとした“冬のはじまり”の贈り物です」
健一が中をのぞくと、そこにはあたたかそうなルームソックスと、手書きのメモが添えられていた。
“寒い日には、足元からあたためてくださいね”
「……ありがとうございます。こういう贈り物、久しぶりです」
「お返しはいりません。でも——」
久美子は少しだけ頬を赤らめて、言葉をつないだ。
「もし気が向いたら、今度、私の家にいらっしゃいませんか? 古い家だけど、こたつも出しましたし……」
健一は驚いたように一瞬目を丸くしたが、すぐに落ち着いてうなずいた。
「それは……うれしいです。じゃあ、その日まではこの靴下、大切にあたためておきます」
暖炉の赤い灯りが、ふたりの影をやわらかく映し出していた。
外の冷たい風も、その瞬間だけは届かない気がしていた。
📦 第1章に登場したおすすめアイテム紹介
冬の図書館でふたりが心温まる時間を過ごす中で、登場したアイテムをご紹介します。
☕ 電子暖炉(LED式・リアル薪風)
特徴:本物の炎のような見た目で、音もなく安心。インテリア性も抜群。
参考商品例:
【Amazon】スリーアップ 電気暖炉ファンヒーター(木目調/LED炎機能)
🧦 ルームソックス(滑り止め付き・厚手)
特徴:冬場の足元に最適。ふかふかで肌触りよく、室内歩行も安全。
参考商品例:
【Amazon】靴下屋 裏起毛ルームソックス(男女兼用・滑り止め付き)
🥤 シニア向けマグカップ(持ちやすい大きめ取手)
特徴:熱が伝わりにくく、持ちやすさと口当たりの良さを両立。
参考商品例:
【Amazon】ナルミ 高齢者用マグカップ(軽量・保温対応)
コメント