― 再びめくられたページに、未来が少し見えた日。
「あのね、これ…昔、あなたと出かけた日のこと、書いてたんです」
そう言って彼女が差し出したのは、少し端が丸くなった手帳だった。
革の表紙には細かな傷がいくつかあり、それがむしろ、長く使われてきた温もりを感じさせた。
パラリ、とページをめくると、彼の名前と、あの日の場所。
そして、「午後、海辺のカフェでサンドイッチ」とだけ書かれていた。
「覚えてますよ。僕、トマトを全部あなたの皿に移した」
「うん、それで“なんで?”って笑ったら、“好きな人が食べたほうが美味しいから”って……」
彼は苦笑いしながら、少しだけ赤くなった。
——
ふたりは長く“友人”だった。
一緒に出かけて、一緒に季節を感じて、でも何も始めずに戻ってきた。
手帳のそのページも、ただの記録としてそこに残されていたのだと思っていた。
けれどその日、彼女がふと開いたのは、次の年のページだった。
そこには日付も、予定も、何も書かれていなかった。
空白のページ。
「ここにね、“ふたりの予定”を書こうと思ってたんです」
「……そのとき、言えばよかったのに」
「言えなかったの。だって、もし断られたら、この手帳、もう開けなくなっちゃいそうで」
彼は黙って手帳を受け取り、空白のページをめくった。
すると、一番最後のページに、走り書きのようなメモがあった。
“〇月〇日 もし叶うなら、またあなたと――”
そこで文は途切れていた。
「これ、最近見つけたんです。…ずっと忘れてたみたいにして」
「じゃあ、続きを書いてもいい?」
「……うん」
彼はページを開き、ボールペンでひとことだけ書いた。
“来週の午後、ふたりで紅茶を飲みに。”
そしてその横に、彼女の名前と自分の名前を並べて書いた。
彼女は黙ってそれを見ていたが、やがてそっと手帳を閉じた。
「今度こそ、忘れないようにします」
「大丈夫。もう僕も、同じ手帳を持ってるから」
その言葉に、彼女がはじめて涙を見せた。
言葉では足りない想いが、すべてそこに滲んでいた。
そしてふたりは、再びめくられたページに、未来を描きはじめた。
● 大切な想いを綴る ― “ふたりの時間”にぴったりのおすすめ手帳3選
「ふたりで過ごした日々」や「これからの予定」を書き留めるのにふさわしい、
上質でぬくもりのある手帳をご紹介します。
①【ミドリ MDノートダイアリー】余白と静けさを楽しむ一冊
- シンプルで美しい無地デザイン
- 書きやすいMD用紙で、にじみにくく裏抜けしにくい
- “何も書かない日”も大切にできる大人の手帳

②【HIGHTIDE】ニューレトロダイアリー(B6)
- 懐かしさ漂うカバーと、しっかり書き込めるレイアウト
- 予定とメモを両立できる2段構成
- “昔と今”をつなぐ記録に最適

③【ほぼ日手帳 weeks】毎日を言葉で彩る定番ロングセラー
- スリムで携帯しやすく、1週間の予定+メモが書ける構成
- 自由度の高いカスタマイズが可能
- 夫婦やパートナーとの“交換日記”にもおすすめ

● 手帳に残す“ふたりの物語”
毎日の暮らしのなかで、気づかないまま過ぎていく“ふたりの記憶”。
それらを丁寧に綴っていくことで、何気ない日々が大切な物語に変わっていきます。
あの日のカフェ、何気ない会話、静かな午後の紅茶。
そんな思い出が、手帳の中でずっと、ふたりの時間を守ってくれるかもしれません。