静かな午後、ひとりで部屋にいると、ラジオから流れてきた曲が、ふいに昔の記憶を引き出した。
古いフォークソングだった。歌詞の一節が、まるで若かった日の自分にそっと触れるようで、胸が少しだけ熱くなった。窓の外に広がる陽だまりも、その瞬間だけ、あの頃の景色と重なった気がした。
ラジオのいいところは、こちらが何も言わなくても、静かに語りかけてくれるところだと思う。ひとの声も音楽も、あの日の空気や匂いを連れてくる。だからか、心のどこかにしまっていた思い出たちが、不意に顔を出す。
学生時代に憧れていた先輩の声。初めて一緒に出かけた日の車内で聴いた曲。子どもが生まれた日のニュース。そんな小さな“音の記憶”が、ラジオから零れるたび、人生の旅路を確かめているような気持ちになる。
今、ラジオを聴く時間がとても好きだ。沈黙の中に流れる言葉や音が、心の隙間をそっと埋めてくれる。ひとりの午後が、静かにあたたかくなる。
ラジオの向こうに誰かがいる。そう思えるだけで、今日という日が少しやさしくなるのだ。