あの人に会えなくなって、もう何年になるだろう。
最初は“少し距離を置こう”くらいの気持ちだった。それが、仕事の都合やお互いの生活の変化に押されて、いつしか連絡も途絶えがちになった。
時間が経つほどに、「まあ、もういいかな」と思う気持ちと、「元気でいてくれたらそれでいい」という祈るような気持ちが交互にやってきた。
でも、ある日の夕暮れにふと思った。あの人がそばにいた時、自分はどれほど支えられていたのだろうと。
何気ないやりとりや、ふいにこぼれた笑い声。寒い朝にそっと差し出してくれた温かいお茶の湯気。それらがじわじわと胸に広がって、まるで昨日のことのように思い出された。
人は会えない時間の中で、ようやく本当の“重み”に気づくのかもしれない。
言葉では足りないけれど、思いがあれば伝わることもある。だから私は今、小さな手紙を書いている。何かを始めるのに、遅すぎることはない。たとえ返事が来なくても、それでもいい。
大切だった、今も大切だ——その気持ちに、あらためて気づけただけで、きっと前に進める。