好きな香りに囲まれて暮らす幸せ

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部屋に入ったとき、ふんわりと漂ってくる香りに「ただいま」と心が返事をする。最近、そんな“香りのある暮らし”を意識するようになった。

昔から匂いには記憶が宿るというけれど、本当にそうだと思う。カモミールティーの香りをかぐと、あの人と語り合った夜を思い出す。どこかで漂ってきた洗いたての洗濯物の香りに、若い頃の我が家のベランダがよみがえることもある。

香りは目に見えないけれど、確かに心を動かす。気分が沈んだ日にはラベンダーのアロマを焚き、読書の時間にはほんのりと甘いバニラの香りを選ぶ。どれも、自分をいたわるちいさな儀式だ。

高価なものでなくていい。100円ショップで買ったサシェや、ドラッグストアのハンドクリームでも十分。大切なのは、自分にとって“心が和らぐ香り”かどうかということ。

誰かを迎えるために香りを用意するのも好きだ。玄関に置いたユーカリのリース、トイレにしのばせたシトラス系のディフューザー。そんなささやかな香りの演出が、暮らしを丁寧にしてくれる気がする。

歳を重ねて、五感の中でいちばん頼りにしているのが“香り”かもしれない。目や耳と違って、ふいに訪れ、心にそっと触れてくるから。

香りに囲まれた暮らしは、記憶と感情を穏やかにつなぎ直す時間でもある。今日も私は、小さな香りに包まれて、静かな幸せをかみしめている。