「そこ、いいの?」
そう尋ねたのは、澄子さんだった。
私はいつものように、リビングの窓際に置かれた椅子に腰をかけていた。
「もちろん。ほら、日が当たってあったかいし」
私は軽く笑って、手招きした。
窓の外では、風が枝を揺らしている。
カーテン越しに差し込む午後の光が、床にふたり分の影を落としていた。
この椅子は、十年ほど前に買ったものだった。
背もたれが高く、やや硬めのクッションがちょうどよい。
日向に置くと、そのまま昼寝もできる。
「私、あの頃からこの椅子が好きだったのよ」
「え? そうなの?」
「うん。でも、あなたがいつも座ってるから、遠慮してたの」
「……遠慮なんて、する間柄か?」
そう言って笑ったつもりだったが、彼女は真顔のままだった。
「椅子って、なんとなく“その人の場所”って感じがあるでしょ」
「あるな」
「でも、ずっと見てたの。あの椅子に座ってるあなたを」
澄子さんはそう言って、ためらうように椅子の前に立った。
「じゃあ、今日は貸してあげる」
「え?」
「今日はね、澄子さんの日。主役なんだから」
私はわざとらしく立ち上がって、彼女にその椅子を譲った。
彼女は、少し驚いた顔をした後、静かに腰をおろした。
「……うん。やっぱり、いい椅子」
背もたれに体を預けながら、そう言って目を細めた。
「でも、お尻がちょっと冷たいかも」
「そう思って、これ買っといた」
私はソファの上に置いていた低反発の座布団を差し出した。
「……用意がいいのね」
「年の功だよ」
午後の光が、彼女の横顔をあたたかく包んでいた。
ふたりの影が、床に並んで揺れていた。
「椅子ひとつで、こんなに気持ちが変わるのね」
「そう?」
「うん。なんだか、“ちゃんとそこにいていい”って感じがする」
「それなら、よかった」
彼女はそっと目を閉じた。
椅子に沈むように、ゆっくりと呼吸を整えながら。
私は、テーブルに置いてあった紅茶を手に取った。
「この椅子、ふたりで座れるくらい広かったらよかったのにな」
「……そのときは、ベンチにして」
「じゃあ、次はベンチ買うか」
「それじゃあ、今度はふたりでお昼寝しないとね」
小さな笑い声が、部屋の中に広がっていった。
外の風の音さえ、やわらかくなった気がした。
椅子はひとつだったけれど、
その影は、ふたつ並んでいた。
同じ午後を、同じ場所で過ごすこと。
それが、こんなにも満ち足りたことなのだと、
私はそのとき、あらためて思った。
🛍 登場アイテムの紹介
◉ やさしく包む「低反発座布団」
📌お尻や腰の負担をやわらげる高反発ウレタン
📌滑り止め付きで椅子でもズレにくい
📌カバーは取り外して洗濯OK、カラーも豊富
◉ くつろぎ時間を支える「リクライニングチェア」
📌背もたれ・脚部が連動して倒れるシニア向け設計
📌軽量で移動も簡単、リビングに馴染む落ち着いた色合い
📌専用クッション付きモデルもあり