『冬、ふたりで灯す灯り』より第1章「冬のはじまり、手紙の街で」

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冬のはじまり、手紙の街で

 駅のホームに降り立つと、顔に冷たい風がふれた。

 吐く息は白く、冬が本格的にやってきたことを、身体が実感する。

 真理子は首元のストールをきゅっと巻き直し、キャリーバッグの取っ手を握った。軽井沢の町は雪こそないが、空気の澄みきり方が冬そのものだった。

 約束の時刻は、もうすぐだった。

 誠と別れたのは、ちょうど紅葉が終わる頃。手紙のように静かで、でも確かにぬくもりのある時間を過ごして、しばらく連絡を控えていた。けれど、年の瀬が近づくにつれて、ふたりとも自然と手紙を書くような気持ちで再び言葉を交わしはじめた。

「駅前のポストの前で、待ってます」

 誠のメールは、そんなふうに書かれていた。

 そして今――

 赤いポストの前に立つ誠の姿が見えた。コートの襟を立て、手には革の手袋。こちらに気づくと、ゆっくり手を上げて笑った。

「寒くなりましたね」

 真理子も自然と笑顔を返した。

「はい。でも……来てよかったです」

 ふたりは、駅からほど近くにある「軽井沢郵便博物館」へと向かった。明治時代の建物を改装した小さな施設で、ふたりとも手紙好きということから、今回の旅のきっかけになった場所だった。

 展示室には、古いポストや風景印、昔の切手、戦時中に送られた家族への手紙などが並んでいた。ガラス越しに並ぶ封書のひとつひとつに、当時の人々の想いが滲んでいるようだった。

「字って、なんてことのない線なのに、人の心を運ぶんですね」

 真理子の言葉に、誠はしばらく黙って頷いていた。

「メールより、手紙の方が言えないことまで伝えられる気がします。不器用なぶん、誠実に書こうとするからでしょうか」

 展示の一角に、来館者が自由に書ける「未来への手紙」コーナーがあった。

 棚には便箋と万年筆、消印入りのポスト型投函口。

「……書いてみませんか?」と誠が言った。

 ふたりは並んで腰かけ、それぞれに向き合って便箋にペンを走らせた。

 誰宛てというわけでもない。ただ「これからの自分」に向けた、静かな言葉だった。

 書き終えると、木製のポストにそっと入れた。

 午後になり、ふたりは博物館裏のティールームに立ち寄った。

 薪ストーブの火がゆらめく店内。注文した紅茶と林檎のパイがテーブルに運ばれてくると、ほっと息がこぼれた。

「……また、こうして会えてよかったです」

 真理子が言った。

「こちらこそ。あの旅のあと、絵を描くときに真理子さんの横顔が浮かぶようになって……いろんな景色が、少し変わって見えるようになりました」

 外はまだ午後なのに、もう空が少し白み始めていた。

 冬の一日は短い。でも、その短さもまた、愛おしく思えた。

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