『春の風が、名前を運ぶ日』第2章「図書館の春支度」

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 図書館の窓辺には、春の光がふわりと降り注いでいた。

 江原久美子は、木の窓枠を拭きながら、あたたかさの増した空気を肌で感じていた。

 「春の装飾、そろそろ始めましょうかね……」

 カウンター横の壁には、昨年と同じ「春の読書フェア」の文字がかすかに見えた。だが、今年は何か少し違うものにしたかった。もっと、手の届く春を——誰かの心に残る春を。

 午後、森田健一が訪れると、久美子は手元の装飾案を広げた。

 「今年は、手作りの飾りを多めにしようと思うんです。紙の桜や、春のことばを吊るしたり」

 「春のことば、ですか?」

 「ええ。“花冷え”とか、“うらら”とか……音のきれいな日本語って、読書にも似てる気がして」

 健一は頷きながら、作業台に向かう久美子を見つめていた。

 「そういう発想、あなたらしいですね」

 「ふふ、健一さんも手を動かしてくださると助かりますよ?」

 「もちろん。図書館の春支度係、臨時でお手伝いさせていただきます」

 ふたりは、図書館の一角に並んで腰を下ろし、色とりどりの折り紙や和紙に手を伸ばした。

 久美子が紙に花弁を描き、健一がそれを切り抜く。

 途中、紙くずの中に「花びらじゃなくて魚の形」が混ざって笑いがこぼれた。

 「あっ、間違えた。これじゃ“春の味覚フェア”ですね」

 「いいですね、それ。読書のお供に鰆の特集なんて」

 「……笑いのセンスまで春めいてきましたね、健一さん」

 夕方、装飾を吊るし終えると、窓辺がまるで花のトンネルのように彩られた。

 「どうですか?」

 「きれいです。……まるで、ここだけ春が早く来たみたいだ」

 久美子は、ホチキスの針を最後に留めながら、そっと息をついた。

 「春は、心を緩める季節ですね。……少しずつ、いろんなものが解けていくような」

 「そうですね。……僕も、心の“結び目”をほどいていけたらと思ってます」

 「結び目?」

 「ええ。あなたと会ってから、“ひとりで抱え込まなくてもいい”と思えるようになったから」

 窓の外では、沈みかけた陽が建物の影を長くしていた。

 でもその影さえも、やわらかく見える春の夕暮れだった。

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この章では、春の装飾や図書館作業を通じたふたりの手作り時間に焦点が当たりました。

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