『夏の音、もう一度』第5章「夏の終わり、ふたりの答え」

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 蝉の声が少しだけ遠のいたある日。

 町の空気は、夏の終わりを告げるように柔らかく、涼やかだった。

 「誠一さん、これで三回目の“出勤”ね」

 「出勤なんて言うと、緊張しちゃうよ」

 ふたりは笑い合いながら、商店街の八百屋から戻ってきた。

 エコバッグの中には、新鮮なナスとトマト、そして澄子の好きな青じそが詰まっていた。

 「あなたって、野菜を選ぶの、ほんと丁寧ね」

 「写真と同じだよ。“いい顔してる”やつを選ぶのさ」

 昼過ぎ、店を開ける準備をしながら、澄子がふと立ち止まった。

 「ねえ、来週の日曜、時間ある?」

 「あるよ。なんか予定?」

 「……昔、夫とよく行ってた喫茶店が郊外にあって。閉店するって聞いたの。最後にもう一度行っておきたくて」

 「それって、ひとりで行くつもりだった?」

 「ううん。正直に言うと、“ひとりで行く勇気が出なかった”。……だから、一緒に来てくれたら、うれしい」

 誠一は、迷わずうなずいた。

 「もちろん。大切な場所なら、ぜひ一緒に」

 ふたりはその日、閉店後に風椅子の窓際でアイスコーヒーを飲んだ。

 陽が少しだけ傾き、部屋の中に長い影が伸びる。

 「ねえ、誠一さん」

 「ん?」

 「こうしてるとね、“この先”って言葉が、少しだけ現実味を帯びて聞こえるの」

 「“この先”って?」

 「たとえば、今の暮らしに、あなたが少しずつ関わってくれてること。来週の日曜の予定も。“また来てくれる?”って、聞かなくても思えること」

 「それって……つまり、“一緒に過ごしていきたい”ってことかな」

 澄子は小さくうなずいた。

 「焦らなくてもいい。無理に言葉にしなくてもいい。でもね、こういう日々を大事にしたいなって思える相手が、あなたでよかったって思ってる」

 誠一は、手元のグラスをゆっくり置いた。

 「……僕も同じ気持ちだよ。今の時間が、あったかくて、静かで、嬉しくて。……こんな日々を、もう少し先まで見ていたい」

 風が店内を抜け、ふたりの言葉をやさしく撫でた。

 外では、ツクツクボウシが最後の力を振り絞るように鳴いていた。

 この夏の音は、ふたりだけの記憶になった。

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