『冬の灯りに、ふたりの影』第3章「凍える道の上で」

ブログ

 図書館へ向かう途中、江原久美子は足を止めた。

 昨夜降った雪が、細い歩道にまだ残っている。日が昇っても気温は上がらず、地面は薄く凍りついていた。

 ——健一さん、大丈夫かしら。

 昨夜、短い電話があった。

 「ちょっと寒気がしてね。今日は家で休もうかと」

 声のトーンは静かだったが、普段は決して弱音を吐かない彼がそう言うのだから、本当に具合がよくないのだろう。

 電話を切った後も、久美子はずっと落ち着かなかった。

 昼過ぎ、仕事を終えた久美子は、いつもの道ではなく、少し遠回りの坂道を歩いていた。

 健一の住むアパートのそばを通るルートだ。

 何かを届けるわけでもなく、ただ様子を見たくて。

 それだけの理由で足が向いていた。

 ——本当にただ、それだけ。

 彼女は自分にそう言い聞かせながら、手袋の中で指を組んだ。

 アパートの前まで来ると、階段の途中で立ち止まる。

 郵便受けのあたりに、健一の影は見えなかった。

 けれど、窓辺のカーテンのすき間に、灯りがひとつ、ぼんやりと見えた。

 そして、ゆっくりとそのカーテンが開いた。

 ——目が合った。

 健一が、驚いたように窓を開け、マスク越しに手を振った。久美子も小さく手を挙げた。

 「来てくれたんですか?」

 「たまたま通っただけです。……気になって、つい」

 「少し熱があって。でも、もう大丈夫そうです。……お見せできる顔じゃないけど」

 「心配しました。……お顔、見れてよかった」

 健一は苦笑した。

 「近くの薬局で買った栄養ドリンクが効いたみたいです。おかゆを食べて、少し眠って、ようやく落ち着きました」

 「よかった。……でも、無理は禁物ですよ」

 久美子は、ポケットから小さな包みを取り出した。

 「これ、しょうが湯。うちで多めに作ったので。飲んで、また汗をかいてください」

 健一は受け取ると、ゆっくりと頭を下げた。

 「……ありがとうございます。外は冷えてますね」

 「ええ、でも、今は心があたたかいです」

 ふたりのあいだを、少しだけ風が通り抜けた。

 帰り道、久美子は足元を見つめながら歩いていた。

 冷たいアスファルトの上に、ふたりの影が交わっては、また離れてゆく。

 「ふたりとも、若くはない。でも……年齢だけでは測れない、思いやる時間がある」

 そう思った。

 そして、ふたりの影が重なる日々が、また明日へとつながっていくのを願いながら、

 久美子はそっと自分のマフラーを巻き直した。

📦 第3章に登場したおすすめアイテム紹介

この章では、冬の体調管理と、気遣いの贈り物として登場した実用品を中心にご紹介します。

🍵 しょうが湯パック(無添加・個包装タイプ)

特徴:身体を内側から温め、風邪のひき始めにもぴったり。優しい甘さ。

参考商品例:

【Amazon】黒糖入りしょうが湯(無添加・10包入り)

😷 シニア向け立体マスク(呼吸しやすい・やわらか耳ひも)

特徴:顔にフィットしやすく、長時間でも快適。シンプルで上品な色合い。

参考商品例:

【Amazon】やわらか快適立体マスク(シニア用・グレー・5枚入り)

💧 栄養ドリンク(低カフェイン・シニア対応栄養設計)

特徴:風邪気味のときや食欲がないときに。カフェイン控えめで安心。

参考商品例:

【Amazon】リポビタンライフ(カフェインレス・栄養機能食品・10本セット)

コメント

タイトルとURLをコピーしました