図書館へ向かう途中、江原久美子は足を止めた。
昨夜降った雪が、細い歩道にまだ残っている。日が昇っても気温は上がらず、地面は薄く凍りついていた。
——健一さん、大丈夫かしら。
昨夜、短い電話があった。
「ちょっと寒気がしてね。今日は家で休もうかと」
声のトーンは静かだったが、普段は決して弱音を吐かない彼がそう言うのだから、本当に具合がよくないのだろう。
電話を切った後も、久美子はずっと落ち着かなかった。
昼過ぎ、仕事を終えた久美子は、いつもの道ではなく、少し遠回りの坂道を歩いていた。
健一の住むアパートのそばを通るルートだ。
何かを届けるわけでもなく、ただ様子を見たくて。
それだけの理由で足が向いていた。
——本当にただ、それだけ。
彼女は自分にそう言い聞かせながら、手袋の中で指を組んだ。
アパートの前まで来ると、階段の途中で立ち止まる。
郵便受けのあたりに、健一の影は見えなかった。
けれど、窓辺のカーテンのすき間に、灯りがひとつ、ぼんやりと見えた。
そして、ゆっくりとそのカーテンが開いた。
——目が合った。
健一が、驚いたように窓を開け、マスク越しに手を振った。久美子も小さく手を挙げた。
「来てくれたんですか?」
「たまたま通っただけです。……気になって、つい」
「少し熱があって。でも、もう大丈夫そうです。……お見せできる顔じゃないけど」
「心配しました。……お顔、見れてよかった」
健一は苦笑した。
「近くの薬局で買った栄養ドリンクが効いたみたいです。おかゆを食べて、少し眠って、ようやく落ち着きました」
「よかった。……でも、無理は禁物ですよ」
久美子は、ポケットから小さな包みを取り出した。
「これ、しょうが湯。うちで多めに作ったので。飲んで、また汗をかいてください」
健一は受け取ると、ゆっくりと頭を下げた。
「……ありがとうございます。外は冷えてますね」
「ええ、でも、今は心があたたかいです」
ふたりのあいだを、少しだけ風が通り抜けた。
帰り道、久美子は足元を見つめながら歩いていた。
冷たいアスファルトの上に、ふたりの影が交わっては、また離れてゆく。
「ふたりとも、若くはない。でも……年齢だけでは測れない、思いやる時間がある」
そう思った。
そして、ふたりの影が重なる日々が、また明日へとつながっていくのを願いながら、
久美子はそっと自分のマフラーを巻き直した。
📦 第3章に登場したおすすめアイテム紹介
この章では、冬の体調管理と、気遣いの贈り物として登場した実用品を中心にご紹介します。
🍵 しょうが湯パック(無添加・個包装タイプ)
特徴:身体を内側から温め、風邪のひき始めにもぴったり。優しい甘さ。
参考商品例:
【Amazon】黒糖入りしょうが湯(無添加・10包入り)
😷 シニア向け立体マスク(呼吸しやすい・やわらか耳ひも)
特徴:顔にフィットしやすく、長時間でも快適。シンプルで上品な色合い。
参考商品例:
【Amazon】やわらか快適立体マスク(シニア用・グレー・5枚入り)
💧 栄養ドリンク(低カフェイン・シニア対応栄養設計)
特徴:風邪気味のときや食欲がないときに。カフェイン控えめで安心。
参考商品例:
【Amazon】リポビタンライフ(カフェインレス・栄養機能食品・10本セット)
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