湯気の向こうに 【最終章】新たな朝

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朝の光が、ゆっくりと仁と澄子の住む家を包み込んでいた。
窓辺に置かれた鉢植えの緑が、優しく揺れる。

「おはよう、澄子さん」
仁がコーヒーを手に、リビングに入ってくる。

「おはよう、仁さん」
澄子はテーブルの向こう側で、穏やかな笑みを浮かべていた。

二人の生活は、ゆったりとしたリズムで流れていた。
朝の散歩は日課となり、近所の公園で顔見知りができることも増えた。

「最近は、健康管理アプリで歩数や睡眠の質もチェックしているの」
澄子は楽しそうに話す。

「おかげで、体調もいい感じだ」
仁も続ける。

家の中は、安全性に配慮した設計に少しずつ変えていった。転倒防止マットや手すりを設置し、安心して暮らせる空間になっている。

「こうした便利なアイテムがあると、日々の暮らしがぐっと楽になるね」
仁はそう言って、テーブルの上にある小さな防災グッズセットを指差した。

「万が一に備えておくのは大事よね」
澄子も頷く。

二人の距離は、かつてないほどに近く、心は穏やかだった。

「仁さん、これからもずっと一緒に歩んでいきましょうね」
澄子の言葉に、仁は優しく答えた。

「もちろんだよ。人生の後半戦も、一緒に楽しく過ごそう」

過去の苦労や痛みも、今の幸せのためのかけがえのない経験だった。
二人はそう実感しながら、新たな日々を歩み出す。

外では小鳥のさえずりが聞こえ、風がカーテンを揺らした。
その穏やかな朝の光景は、これからもずっと続いていくのだろう。